顔、手足が動かしにくい場合、脳出血が原因の場合もあります
顔、手足が動かしにくい場合の原因として、神経麻痺による末梢神経障害や、脳出血による麻痺などが考えられます。
末梢神経障害
特発性顔面神経麻痺
原因不明の特発性顔面神経麻痺は、幅広い年齢層に見られ、片側の顔で、目が十分に閉じられない、瞬きができない、口に含んだ水がこぼれる、額に皺が寄せられない、などの症状が出ます。聴覚過敏症状や味覚低下の症状が出ることもあります。ヘルペスウイルスが関連していることもあり、抗ウイルス薬とステロイド治療を行います。完全回復は80%と言われていますが、回復には1ヶ月から6ヶ月かかります。
尺骨神経麻痺
主に手の小指と人差し指の動きが悪くなる症状で発症します。鷲手変形をきたすことが有名です。原因としては、肘管での神経の絞扼が原因であることが多いです。骨折や脱臼などの外傷が原因にある場合は整形外科などでの手術が必要になります。
橈骨神経麻痺
手関節、手指を伸展する力が麻痺することで、下垂手と呼ばれる状態になります。原因は上腕外側での橈骨神経の圧迫によるものが多いです。寝ている間に圧迫されて起こることも多いですが、稀に、骨折、筋肉注射、糖尿病などが原因となることもあります。
腓骨神経麻痺
膝の外側を走る腓骨神経が圧迫されることで起こります。多くは物理的な圧迫が原因であり、意識障害をきたした患者さんが知らないうちに膝の外側が圧迫されていて、起こすこともあります。足関節での背屈ができなくなり、足を高く上げてから踵から下ろす特徴的な歩行障害をきたし、下垂足と言われます。程度によっては神経剥離術を行うこともあります。
神経痛性筋萎縮症
片側の肩の痛みで始まり、痛みが消えた後に筋力低下が起こる疾患です。感染、外傷、労作など様々な原因が指摘されていますが、特発性も多く、確率した治療法はありません。筋力の回復には1年近くかかることもあります。
片麻痺(中枢性)
一過性脳虚血発作
一時的に脳に血流が行かず、短時間のみ神経症状が生じ、多くは24時間以内に症状が消失する病態です。診察時には症状が消失していますが、脳卒中の前触れともいわれ、早期に脳梗塞を発症するリスクが高く専門医療機関での迅速かつ適切な診断・治療が必要な疾患です。
脳梗塞
脳梗塞とは、脳の血管が突然閉塞し、血流が少なくなることで、脳の神経細胞の機能が障害される病気です。障害された部位によって症状は様々です。左右どちらかの半身の麻痺や感覚障害、構音障害(呂律が回らない)がでることが多いです。失語症、意識障害、視野の半分が見えにくい(同名半盲)、体のバランスがとれない(失調)などの症状がでることもあります。近年は血栓溶解療法や血管内治療による血栓回収療法の登場によって、重篤な症状であったにもかかわらず、劇的な回復を見せる例もみられるようになりました。これらの再開通療法は、発症後数時間以内に行わないと神経機能の回復は困難になりますので、早期の医療機関受診が大切です。上にあるような症状を自覚したらすぐ医療機関を受診しましょう。
脳内出血
脳内出血は、脳を栄養している血管が破れて、脳の実質内に出血し脳の神経細胞が障害される病気です。障害された部位によって症状は様々です。生活習慣病による動脈硬化や高血圧症そのものが原因であることが多いですが、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、もやもや病、海綿状血管奇形、アミロイドアンギオパチーなどの血管異常が原因で出血を起こすこともあります。治療は血圧を下げる薬剤を投薬しますが、それで効果が不十分である場合や、生命の危険がある場合は手術療法を行うこともあります。
慢性硬膜下血腫
軽い頭部打撲をきっかけに、数週間から数ヶ月かけて、脳を覆う硬膜と脳との間にじわじわと出血がたまる病気です。出血で脳が圧迫されることにより、頭痛、運動麻痺、ふらつき、歩いていてどちらかに傾く、急な認知症様症状、性格変化などで発症します。正しく診断し手術を行うと症状は改善しますが、逆に放置すると命にも関わる疾患です。また再発をきたしやすい疾患であり、一旦手術が終わっても、定期的な診察をうけることが重要です。
脳腫瘍
頭蓋内に発生する腫瘍の総称で、脳細胞から発生する原発性脳腫瘍と、体の癌が脳内に転移する転移性脳腫瘍に大きくわかれます。発生する場所によって症状は様々ですが、慢性的な頭痛、吐き気・嘔吐、視覚異常、しびれ・手足の麻痺、言語障害、聴覚障害などの症状が出ます。多くの場合、高度医療機関での治療が必要となります。