片頭痛は治療ができる疾患です
片頭痛は、日常生活に支障をきたす一次性頭痛(頭痛の原因となるような何らかの病気がない頭痛)です。
日本では、成人の約8.4%が片頭痛にかかっていると報告されています。
片頭痛の種類
片頭痛は下記の3つに分類されます。
頭痛の前に起こる「前兆」症状の有無により、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の二つのタイプに分類されます。
前兆のある片頭痛
視覚障害や感覚異常などの前兆が現れた後に頭痛が始まります。
前兆のない片頭痛
前兆がなく、突然頭痛が現れます。
慢性片頭痛
月に15日以上片頭痛が続く状態です。
前兆症状について
前兆症状は、キラキラした光、ギザギザの光が視界にあらわれ見えづらくなる(閃輝暗点)といった視覚性の症状が最も多く(90%以上)、ほかにもチクチク感や感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。
特殊な前兆として、半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もあります。
通常は、前兆が約1時間分続いた後に頭痛が始まります。
頭痛が始まる前に、なんとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感、集中力低下、頸部の凝りといった症状を経験する場合がありますが、これは前兆とは区別して「予兆」といいます。
片頭痛の診断は、
国際頭痛学会の診断基準を確認して行います。
片頭痛による頭痛は、発作的に起こり4~72時間持続し、多くは片側性の拍動性の痛みを特徴としています。
片頭痛は“片”の名前がついていますが、実際には40%近くの患者さんが両側性の頭痛も経験されています。拍動性でない片頭痛発作もあります。
また、頭痛発作中は脳が敏感となり、普段気にならないような光、音、臭いを不快と感じる患者さんも多いです。
また、吐き気や嘔吐を伴うことも多く、階段昇降など日常的な動作によって頭痛が増強するため、寝込んでしまい学校や仕事に支障をきたすこともあります。
片頭痛の診断は、国際頭痛学会の診断基準を確認して行います。
前兆のない片頭痛の診断基準(国際頭痛分類第3版:ICHD-3、2018)
A. B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
B. 頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
① 片側性
② 拍動性
③ 中等度~重度の頭痛
④ 日常的な動作(歩行や階段昇降)などにより頭痛が増悪する。あるいは頭痛のために日常的な動作を避けるD. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目をみたす
① 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
② 光過敏および音過敏E. ほかに最適なICHD-3の診断がない
片頭痛の原因と経過
片頭痛の誘発因子や増悪因子は以下の通りです。
ストレス
ホルモンの変動(特に女性の月経周期)
特定の食べ物(チョコレート、赤ワイン、チーズなど)
睡眠不足や過剰な睡眠
環境要因(気圧の変化、強い光、騒音など)
女性の片頭痛患者さんの約半数は、片頭痛発作が月経周期と関連していることを自覚しています。
月経開始2日前から月経3日目までに起こる片頭痛は月経時片頭痛や月経関連片頭痛などと呼ばれます。
月経に関連した片頭痛発作は、他の時期の片頭痛発作と比較して、重度で持続時間が長く、お薬が効きにくいことが多いです。
片頭痛の経過
-
予兆期:数時間~数日
食欲亢進、過食、あくび、疲労感、集中困難、抑うつ感、感覚過敏、むくみ、肩こり、など
-
前兆期:5〜60分
視覚症状(キラキラした光,ギザギザの光が視界にあらわれ見えづらくなる:閃輝暗点)、チクチク感(アロディニア)、感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状、半身の脱力感、めまい、など
-
頭痛期:2〜72時間
食欲低下、吐き気・嘔吐、動きたくない、眠気、あくび 光・音過敏、におい過敏など
-
回復期:24時間
眠気、食欲低下、疲労感など
片頭痛発作の数時間から数日前からみられるもので、あくび、肩こり、疲労感、集中困難、過敏性などの症状があります。
片頭痛の痛みの特徴は、徐々に頭痛が悪化し、運動で頭痛が悪くなることです。運動で頭痛が悪化するために横になって動かなくなってしまうことも多いです。さらに光や音などに対する過敏性から頭痛が増悪し、高頻度に嘔気や嘔吐を伴います。頭痛発症後には毛髪のピリピリ感や手足のしびれ感といったアロディニアを伴うことがあります。
頭痛のピークを過ぎると、徐々に眠気をきたします。睡眠で改善しますが、重度の頭痛発作の際には疲労感が残存します。
片頭痛の治療法
片頭痛は適切な治療によって管理できます。
治療法は主に以下に分かれます。
急性期治療
急性期治療は、片頭痛発作が起こったときの痛みを速やかにおさえ、仕事や生活にできるだけ早く戻れるようにするための治療です。薬物療法が中心です。
軽度から中等度の頭痛
消炎鎮痛薬(アセトアミノフェン、ロキソプロフェンなどのいわゆる“痛み止め“)を内服します。これらは痛みを感じにくくする、炎症を起こす物質の生成を抑えるという働き方で作用します。
軽症から中等度でも上記の消炎鎮痛剤が過去に効かなかった場合
中等度から重度の頭痛
トリプタン系、ジタン系といった“片頭痛治療薬(レルパックス®︎(エレトリプタン) イミグラン®︎(スマトリプタン) ゾーミッグ®︎(ゾルミトリプタン) アマージ®︎(ナラトリプタン) マクサルト®︎(リザトリプタン) レイボー®︎(ラスミジタン))”を使用します。頭痛発作を引き起こしている脳の神経や血管にはたらきます。
レイボー®︎(ラスミジタン)については下記からご覧いただけます。
急性期治療薬は、片頭痛発作が起こりはじめたら、我慢せずに早めに服用することが重要です。
ただし、片頭痛の薬を1ヶ月に10~15日以上内服していると、薬剤の使用過多になってしまうことで、“薬剤の使用過多による頭痛”を引き起こしてしまうこともあります。この場合は医師と相談して予防薬を内服したり、頭痛がしていない時に薬を飲まないように工夫するなどの対応が必要です。
予防療法
片頭痛発作の回数を少なくしたり、頭痛の程度を軽くするための治療です。片頭痛発作そのものや、発作が起こるのではという不安から生じる日常生活の支障を軽減することが期待されます。
予防療法には、予防治療薬を使用する薬物療法や生活習慣の改善があります。
適応は、急性期治療薬の内服だけでは、日常生活に支障をきたしている患者さんです。
予防治療薬の種類 <抗てんかん薬や降圧薬、抗うつ薬などの内服薬>
神経の過剰な興奮を抑える、脳の血管を安定させるなどの働き方で作用します。