頭痛は命に関わる病気の初期症状であることもあります
頭痛は寝不足の日に起こることもあれば、かき氷を食べた時に起こることもある、日常的な症状です。その一方で、最初の診断や治療が遅れると、最悪の場合は命に関わる病気の初期症状であることもあります。また、片頭痛の患者さんが適切な薬物を使用しないことで、日常生活に支障をきたすこともあります。
頭痛の分類
頭痛は「国際頭痛分類」というものに準拠して分類・診断され、300種類を超える頭痛があると言われています。大きく分けると以下の3つに分類されています。
一次性頭痛
一次性頭痛の中には、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛など、頭痛そのものが疾患である頭痛が含まれます。
二次性頭痛
二次性頭痛は、くも膜下出血など、他の原因疾患があって頭痛が生じる頭痛です。
患者さんは頭痛を症状として訴えますが、私たち医療者は頭痛を疾患として捉え、適切な診断治療を行うことが重要であると考えています。
頭痛診療には問診が大きな役割を果たしますが、それに加えて、MRIをはじめとする画像検査を行うことが危険な二次性頭痛を診断する上で重要な役割を果たします。
患者さんに教えて
いただきたいこと
頭痛で「困っていること」や「受診された目的」をぜひ教えてください。
子どもの送り迎えができない、仕事中に頭痛が起きて集中できない、家族で遊びに行けないなど、頭痛が原因で困っていることは様々だと思います。
また、ご家族に脳卒中などの脳疾患を発症された方がいらっしゃり、頭痛が続いているので心配されている方もいらっしゃると思います。 患者さんの訴えに耳を傾け、一緒に症状の改善を目指したいと考えています。
危険な頭痛のサイン
下記の項目が当てはまると二次性頭痛の可能性があると言われています。
- 01
発熱を含む全身症状
- 02
新生物の既往
- 03
意識レベルの低下を含めた神経脱落症状または機能不全
- 04
急または突然に発症する頭痛
- 05
50歳以降に発症する頭痛
- 06
頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛
- 07
姿勢によって変化する頭痛
- 08
くしゃみ、咳、または運動により誘発される頭痛
- 09
乳頭浮腫
- 10
痛みや症状が進行する頭痛、非典型的な頭痛
- 11
妊娠中または産褥期
- 12
自律神経症状を伴う眼痛
- 13
外傷後に発症した頭痛
- 14
HIVなどの免疫病態を有する患者
- 15
鎮痛薬使用方もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛
上記のそれぞれの項目は下記のような疾患を想定して作成されています。
- 01
髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、巨細胞性動脈炎など
- 02
悪性腫瘍の脳転移(肺癌、乳癌、悪性黒色腫が多い)
- 03
脳出血、脳梗塞などの脳卒中
- 04
くも膜下出血、脳静脈洞血栓症、低髄液圧症候群、可逆性脳血管攣縮など
- 05
脳卒中、巨細胞性動脈炎など
- 06
脳静脈洞血栓症、悪性腫瘍の脳転移など
- 07
低髄液圧症候群、頭蓋内圧亢進など
- 08
キアリ奇形、後頭蓋窩病変など
- 09
脳腫瘍など
- 10
脳静脈洞血栓症など
- 11
子癇前症、下垂体卒中、硬膜外麻酔による髄液漏出症、静脈洞血栓症、可逆性脳血管攣縮など
- 12
海綿静脈洞・下垂体・後頭蓋窩病変、緑内障などの眼疾患
- 13
頭蓋内出血など
- 14
日和見感染症など
- 15
薬物使用過多による頭痛、薬剤性頭痛、物質の離脱による頭痛など
!上記の症状はあくまでデータにすぎません。
軽い頭痛で歩いて外来を受診し、くも膜下出血と診断され緊急手術となった患者さんを、脳神経外科医や救急医は何人も経験しています。当院では問診や身体所見から上記疾患を疑った場合は、血液検査やMRIを用いて診断を行い、手術などの入院加療が可能な病院へ速やかにご紹介いたします。
慢性頭痛について
慢性頭痛の多くが片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛です。慢性的な頭痛を有する患者さんは日本で4000万人と推定されています。そのうち840万人が片頭痛の患者さんであり、そのうち70%以上が頭痛のせいで日常生活に影響が出ていると言われています。
また、片頭痛発作によって毎日60万人の日本人が苦痛を感じ、日常生活を妨げられていることで毎年約2880億円の経済的損失をもたらしているという報告もあります。このように慢性頭痛に苦しんでいる患者さんは多く、社会における負担も大きいにも関わらず、頭痛に関する医療はあまり認知されていません。多くの患者さんが「いつもの大したことのない頭痛」として、苦痛を我慢して日常生活を送っていらっしゃいます。頭痛は「医学的に治療すべき疾患」です。頭痛でお悩みの方はお気軽に当院でご相談ください。
片頭痛治療薬について
昨今、片頭痛の予防に使用される比較的新しい治療方法としてCGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide)関連の予防薬があります。
片頭痛発作に関与する神経伝達物質であるCGRPの作用を阻害し、片頭痛の発作を減少させることが期待できる治療薬です。以下から主なCGRP関連予防薬を紹介します。