「最近、頭痛がほぼ毎日ある」
「体重が増えてから頭痛が増えた気がする」
「頭痛だけでなく、ときどき視界が暗くなる」
このような症状がある場合、片頭痛だけでなく特発性頭蓋内圧亢進症(IIH:Idiopathic Intracranial Hypertension)という病気を考えることがあります。
IIHは、脳腫瘍などの明らかな原因がないにもかかわらず、脳や脊髄を囲んでいる髄液の圧が高くなる病気です。
特に、肥満を伴う若年~中年女性に多いことが知られています。
特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)ではどんな頭痛が起こる?
IIHの頭痛は必ずしも特徴的ではありません。
ズキズキする片頭痛のような痛みを起こすこともあり、「以前から片頭痛があるから」と見過ごされる場合があります。
しかし、次のような症状を伴う場合には注意が必要です。
頭痛が最近急に増えてきた
ほぼ毎日頭痛がある
横になると頭痛が強くなる
朝方に頭痛が強い
数秒間、視界が暗くなる
心拍に合わせて耳の中で「ザーザー」「ドクドク」と音がする
二重に見える
視力や視野がおかしい
特に大切なのが目の症状です。
頭蓋内圧が高くなると視神経が圧迫され、眼底検査で「乳頭浮腫」という異常がみられることがあります。
重症化すると視野障害や視力低下につながることがあるため、単なる頭痛として放置しないことが重要です。
MRIで分かるのでしょうか?
特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)が疑われる場合、頭部MRIは重要な検査の一つです。
まずMRIによって、脳腫瘍、水頭症、脳静脈洞血栓症など、頭蓋内圧が高くなる別の原因がないかを確認します。
またIIHでは、
「empty sella」
「視神経周囲の髄液腔拡大」
「眼球後面の扁平化」
「静脈洞狭窄」
などがMRIでみられることがあります。
ただし、MRIだけでIIHと診断できるわけではありません。
眼底所見や症状を確認し、必要に応じて専門施設で腰椎穿刺による髄液圧測定などを行って診断します。
なぜ体重と関係するのでしょうか?
IIHと肥満には強い関連があります。
体重が増えることで静脈圧、ホルモン、脂肪組織から分泌される物質などが変化し、髄液の産生や吸収に影響する可能性が考えられています。
そのためIIH治療では、従来から体重を減らすことが非常に重要とされてきました。
体重減少によって頭蓋内圧が下がり、頭痛や乳頭浮腫が改善する患者さんがいます。
GLP-1受容体作動薬が特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)治療に注目されています
2026年8月、IIHに対するGLP-1受容体作動薬について、8研究、13,000人以上の患者さんをまとめた新しいメタ解析が発表されました。
GLP-1受容体作動薬は、もともと糖尿病治療薬として開発され、現在では肥満治療にも使用されている薬です。
この研究では、GLP-1受容体作動薬を使用した患者さんで、
乳頭浮腫
頭痛
視覚症状
難治性IIH
が少なくなる傾向が認められました。
しかもその効果は3か月だけでなく、最長24か月の解析でも確認されました。
ただし、ここには大切な注意があります。
現在の研究の多くは観察研究であり、質の高い大規模ランダム化比較試験はまだ十分ではありません。
そのため現時点では、
「IIHならGLP-1薬を使用すべき」
という段階ではありません。
IIHに対する標準治療として自己判断で使用する薬でもありません。
今後の研究が期待されている治療の一つ、という位置づけです。
GLP-1薬は「痩せるから効く」だけではない?
ここが非常に興味深い点です。
GLP-1受容体作動薬は体重を減らすため、結果として特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)が改善すると考えることができます。
しかし実験研究では、それだけではなく、GLP-1受容体が髄液を作る組織に作用し、髄液産生や頭蓋内圧そのものを低下させる可能性も研究されています。
つまり、
「減量するから頭蓋内圧が下がる」
だけでなく、
「薬そのものが頭蓋内圧に作用する」
可能性もあるわけです。
まだ確定した話ではありませんが、今後IIH治療が大きく変わる可能性のある分野です。
「太っている人の頭痛=特発性頭蓋内圧亢進症(IIH)」ではありません
もちろん、体重が多い方に頭痛があるからといってIIHとは限りません。
片頭痛、緊張型頭痛、睡眠時無呼吸症候群、薬剤使用過多による頭痛など、別の原因の方がはるかに多い場合もあります。
重要なのは、
「以前と違う頭痛になっていないか」
を確認することです。
特に、
「最近毎日のように頭痛がする」
「体重増加と同時に頭痛が悪化した」
「頭痛と一緒に視界がおかしい」
「脈に合わせて耳鳴りがする」
という場合は、一度脳神経外科などで相談する価値があります。
姫路駅前みどり脳神経外科クリニックでは、片頭痛や慢性頭痛だけでなく、二次性頭痛の可能性も考えながら診療しています。
必要に応じて頭部MRIを行い、頭痛の原因となる頭蓋内病変や血管病変が隠れていないかを確認します。
「いつもの片頭痛だと思っていたけれど、最近何か違う」
という変化は、受診を考える一つのサインです。
頭痛だけでなく、視覚症状や耳鳴りなどもあれば、診察時にぜひ教えてください。


