2026年6月9日、日本医療政策機構(HGPI)が「片頭痛対策に関する政策提言~生活者のためのイノベーション普及に向けて~」を公表しました。
この提言は、片頭痛を個人が我慢する問題としてではなく、医療・学校・職場・行政が連携して取り組む課題として捉えています。今回は、提言の背景と8つのポイントを、わかりやすくご紹介します。出典:HGPI

片頭痛は、生活に影響する身近な病気です
提言では、日本の片頭痛患者は15歳以上で約840万人、小児を含めると約1,000万人規模と推計されています。特に30~40代の女性に多く、仕事や育児、介護を担う世代の生活に影響しています。
それでも、頭痛は「誰にでもあるもの」と軽く見られがちです。患者さん自身も「昔から頭痛持ちだから」「市販薬で何とかなるから」と考え、医療機関への相談をためらうことがあります。
頭痛による負担は、仕事や学校を休むことだけではありません。出勤・登校できていても、集中できない、作業が進まない、予定を楽しめないなど、周囲から見えにくい支障があります。片頭痛を理解するには、痛みの強さだけでなく、生活への影響に目を向けることが大切です。
治療法が進歩しても、患者さんに届かない理由
今回の提言が重視しているのは、治療の選択肢が増えても、必要な方が適切な診療につながっていないという問題です。
患者さんが頭痛を我慢し、医療者が鎮痛薬の処方だけで対応し、制度も時間をかけた問診や生活指導を十分に評価できていない。そのような状況が重なると、治療を見直す機会が生まれにくくなります。
提言では、こうした停滞を「クリニカル・イナーシャ(臨床的惰性)」と説明しています。患者さんや医師の意識だけの問題とせず、診療体制や制度も含めて改善する必要があるという考え方です。出典:政策提言全文
8つの政策提言とは
1.片頭痛への理解を社会に広げる
片頭痛は治療について相談できる病気であることを、広く伝える提案です。患者さん本人だけでなく、家族や周囲の人の理解も、受診や治療継続を支えます。
2.学校で頭痛について学ぶ機会をつくる
子どもの頭痛を「怠け」や「気持ちの問題」と決めつけず、適切に対応できる環境を目指します。児童・生徒、保護者、教職員への教育や、養護教諭への支援が挙げられています。
3.必要な人を専門的な診療につなげる
かかりつけ医から専門医への紹介を、より円滑にする提案です。婦人科や薬局なども含め、頭痛で困っている方が適切な相談先に出会える仕組みを整えます。
4.丁寧な頭痛診療を診療報酬で評価する
頭痛診療では、症状の聞き取り、頭痛ダイアリーの確認、生活指導、治療方針の相談などが重要です。こうした時間と専門性を、診療報酬の仕組みで適切に評価することを求めています。
5.職場でも片頭痛対策に取り組む
企業の健康づくりに頭痛対策を取り入れ、従業員や管理職の理解を深める提案です。休んだ日数だけでなく、頭痛を抱えながら働くことによる負担にも目を向けます。
6.患者さんの声を医療や政策に生かす
頭痛ダイアリーなどで症状や生活への影響を共有し、患者さんと医療者が一緒に治療を考えます。さらに、患者さんの経験や意見を、政策づくりにも反映することを目指しています。
7.新しい治療を受ける際の負担を軽減する
CGRP関連薬などの治療選択肢が増える一方、費用が治療開始や継続の障壁になる場合があります。経済的な負担の軽減や、必要な治療へアクセスしやすい制度の検討を求めています。
8.行政が継続的に取り組む体制を整える
片頭痛対策を進める行政の担当体制を明確にし、政策上の位置づけや法的な基盤を整える提案です。一時的な啓発で終わらず、継続して取り組める仕組みを目指します。
これらは、すでに決まった制度変更ではなく、今後の改善に向けた提案です。出典:政策提言概要版
頭痛を一人で抱え込まないために
今回の提言が伝えているのは、片頭痛のある方を支えるには、薬の進歩だけでなく、周囲の理解や受診しやすい環境も必要だということです。なお、これは社会の仕組みを改善するための政策提言であり、個々の患者さんの治療方法を定めた診療ガイドラインではありません。
姫路駅前みどり脳神経外科クリニックでも、頭痛の症状だけでなく、仕事や家事、学校生活で困っていることを大切にしながら診療を行います。繰り返す頭痛でお困りの方は、「頭痛くらいで」と遠慮せずご相談ください。


