「片頭痛は以前より減った。でも、なんとなく毎日すっきりしない」
「頭痛がない日でも、また痛くなる気がして予定を入れられない」
「頭痛は治まっているけれど、光がまぶしい、疲れやすい、集中できない」
片頭痛を治療している患者さんから、このようなお話を聞くことがあります。
片頭痛の治療効果はこれまで、主に「1か月に頭痛が何日あるか」で評価されてきました。
例えば月に10日あった片頭痛が3日に減れば、治療はかなり効いているように見えます。
しかし最近の研究から、片頭痛治療ではもう一歩踏み込んで、「頭痛がない日は、本当に普段どおり元気に過ごせているのか」を見ることが重要だと考えられるようになっています。
片頭痛は「頭が痛い時間」だけの病気ではありません
片頭痛というと、ズキズキする頭痛、吐き気、光や音がつらい、といった発作中の症状を思い浮かべる方が多いと思います。
ところが片頭痛では、発作と発作の間にもさまざまな症状が残ることがあります。
例えば、
光や音に敏感
疲れやすい
集中しにくい
頭が重い感じがする
「また頭痛になるのでは」と不安になる
頭痛を避けるため予定を控える
といった状態です。
つまり、「今日は頭痛がない」ということと、「今日は片頭痛をまったく意識せず生活できた」ということは同じではないのです。
「Crystal clear day」という新しい考え方
2026年に発表された研究では、CGRP抗体で片頭痛予防治療を受けている患者さんについて、「頭痛日数」だけでなく、発作と発作の間の状態も調べました。
研究では、頭痛や片頭痛関連症状がなく、普段どおり過ごせる日をCrystal clear dayとして評価しています。
その結果、片頭痛発作の回数が十分に減った患者さんでも、「完全にクリアな日」が少ない人では、片頭痛による生活への負担が残っていました。
一方、完全に調子のよい日が増えている患者さんほど、発作と発作の間の生活も改善していました。
この研究から分かる重要なポイントは、
「頭痛を減らすこと」と「片頭痛から解放された生活を取り戻すこと」は、少し違う
ということです。
CGRP治療でも「何日減ったか」だけを見ない
現在、片頭痛予防には従来の内服薬に加えて、CGRP関連抗体やゲパントなど新しい治療選択肢があります。
こうした治療を開始した際、
「月15日あった頭痛が5日になった」
という数字はもちろん重要です。
しかし治療の目的は、単純に頭痛日数という数字を小さくすることだけではありません。
例えば頭痛が5日まで減ったとしても、
「残りの日もずっと頭痛を警戒している」
「旅行や外出を避けている」
「頭痛が起きそうで仕事をセーブしている」
のであれば、まだ治療によって改善できる部分が残っている可能性があります。
逆に頭痛が完全にゼロになっていなくても、
「頭痛のことを忘れて仕事ができる」
「家族との予定を立てられる」
「休日を楽しめる」
という日が増えていれば、それは大きな治療効果と考えられます。
頭痛薬を飲む回数も重要です
もう一つ重要なのが、急性期頭痛薬を使用する回数です。
2026年の実臨床研究では、片頭痛予防薬であるアトゲパントによる治療後、トリプタンの使用量が大きく減少したことが報告されました。
片頭痛治療では、
「頭痛が何日減ったか」
だけではなく、
「頭痛薬を飲む日がどれだけ減ったか」
「1回の発作で何回薬が必要だったか」
まで見ることで、より実際の生活に近い治療効果を評価できます。
頭痛薬を飲む日が減ることは、薬剤使用過多による頭痛(MOH)を予防するうえでも重要です。
「片頭痛を意識しない日」を増やすことが治療の目標
片頭痛は命にかかわることが多い病気ではありません。
しかし、仕事、家事、育児、学校、旅行など、日常生活のさまざまな場面を制限することがあります。
だからこそ片頭痛治療の目標は、
「我慢できる程度にする」
ことだけではありません。
理想的には、
「片頭痛のことを考えずに普通の生活ができる日を増やす」
ことを目指します。
姫路駅前みどり脳神経外科クリニックでは、片頭痛の診療において頭痛の回数だけでなく、急性期頭痛薬の使用状況、HIT-6やMIDAS、生活への影響などを確認しながら治療を検討しています。
必要に応じて頭部MRIなどを行い、二次性頭痛が隠れていないかも評価します。
「以前より頭痛は減った。でも、まだ生活が頭痛に支配されている気がする」
そんな場合も、一度治療内容を見直してみる価値があります。
目指すのは、単に「頭痛のない日」ではなく、「片頭痛を忘れて過ごせる日」を増やすことです。


