最近「物忘れが増えた」「同じ話を何度もしてしまう」「段取りが悪くなった気がする」などが気になって受診される方が増えています。
こうした“認知機能の低下”がある一方で、日常生活(買い物、服薬管理、家計管理、仕事など)はおおむね自立している状態を、「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」と呼びます。MCIは、正常加齢と認知症(生活に支障が出る状態)の“中間”に位置づけられる概念です。
MCIは将来の認知症のリスクが高いことが分かっており、専門外来など臨床の場では年間およそ数%〜10%程度が認知症へ進行すると報告されています。
一方で、改善したり、安定して推移する方もいます。だからこそ「早めに状態を整理し、原因を見極め、対策を始める」ことが大切です。

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MCIでよくある症状
物の置き忘れ・約束を忘れる
会話中に言葉が出にくい
仕事や家事の段取りに時間がかかる
注意力が続かない、ミスが増えた
以前より意欲が落ちた(気分の落ち込みを伴うことも)
ポイントは、**「困っているけど、生活は何とか回っている」**こと。ただし、周囲の方が先に変化に気づく場合もあります。
鑑別診断(似た症状を起こす病気・状態)
MCIの背景にはアルツハイマー病の初期が含まれますが、それだけではありません。治療で改善し得る原因を見逃さないことが重要です。
1)加齢による物忘れ(正常範囲)
ヒントがあると思い出せる
生活の支障がほぼない
進行が目立たない
2)うつ病・不安(仮性認知症)
“やる気が出ない”“集中できない”が中心
本人の自覚が強い
睡眠障害を伴いやすい
※気分の問題が主因なら治療で改善が期待できます。
3)薬剤性(眠気・注意低下)
睡眠薬、抗不安薬、抗アレルギー薬、抗コリン作用のある薬などで悪化することがあります
(服薬歴の確認がとても大事です)。
4)睡眠時無呼吸、慢性睡眠不足
日中の眠気、いびき、起床時頭痛など
睡眠を整えるだけで“頭の回り”が改善することもあります。
5)甲状腺機能異常、ビタミン欠乏、貧血など(内科的原因)
血液検査で評価します(治療可能な原因が見つかることがあります)。
6)脳血管性(小さな脳梗塞・脳小血管病)
“まだら”に認知が落ちる、歩行が遅い、ふらつきなど
高血圧・糖尿病・脂質異常などの管理が重要です。
7)治療可能な脳の病気
慢性硬膜下血腫(頭を打った後にじわじわ悪化)
正常圧水頭症(NPH)(歩行障害・尿失禁・物忘れ)
脳腫瘍 など
これらは画像検査で見つけられ、治療で改善が期待できることがあります。
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MRI検査で分かること
認知機能低下が疑われるとき、**脳MRI(またはCT)などの「構造画像」**は、主に次の目的で行われます。
①「治療可能な原因」を除外するため
慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症など、見逃すと危険だが治療で良くなり得る病気をチェックします。
②原因の“見当”をつけるため(病気ごとのパターン)
MRIでは、脳萎縮の部位(例:海馬周辺)、脳梗塞や脳小血管病の有無などから、背景病態の推定に役立つことがあります。
③今後の比較(ベースライン)
「今の状態」を残しておくと、数か月〜1年単位で変化を追う際に有用です(ただし“毎年必ず”が必要とは限りません。症状や経過で判断します)。
「すぐ受診・早めのMRI」が望ましいサイン
数週間〜数か月で急に悪化(急速進行)
片麻痺、ろれつ不良、視野異常など神経症状を伴う
歩きにくさ・転びやすさ、尿失禁が目立つ(NPHの可能性)
頭部外傷のあとから物忘れが進んだ
けいれん、強い頭痛、発熱などを伴う
まとめ:MCIは「早期発見・原因チェック・生活改善」が鍵
軽度認知障害(MCI)は、認知症の“前段階”になり得る一方で、改善・安定する方もいる状態です。大切なのは、
生活への影響を丁寧に確認し、
薬・睡眠・気分・内科疾患など“治せる原因”を探し、
MRIで治療可能な脳の病気を見逃さないこと。
当院では、問診・簡易認知評価・必要な血液検査に加え、脳MRIで安全確認と原因推定を行い、今後の方針(経過観察・生活指導・専門医紹介など)を一緒に考えます。
姫路で「年のせいかな…」と迷う段階こそ、早めの相談がおすすめです。
もの忘れや認知症が心配な方は、お早めにご相談ください。


