こんにちは。姫路駅前みどり脳神経外科クリニックです。
当院では頭痛やMRI検査のほか、赤ちゃんのための頭のかたち外来でも、ご相談もいただいております。
今回は「ドーナツ枕」や「ベビー枕」による頭の形の矯正について、医学的な観点から整理してお伝えします。
ドーナツ枕で頭の形は良くなるの?
赤ちゃんの頭のゆがみ(絶壁や左右差)を気にされて、ドーナツ型の枕を試そうかと考える保護者の方は少なくありません。
しかし現時点では、「ドーナツ枕が赤ちゃんの頭の形を予防・改善する」という科学的な根拠は十分に示されていません。
口コミや体験談の中には「良くなった」と感じる方もいますが、効果は個人差が大きく、医学的に推奨できるものではないのです。
実際にアメリカの食品医薬品局(FDA)は、頭の形を治す目的で市販の枕を使うことに対して注意喚起を行っています。
枕を使うリスクについて
効果が不明確なだけでなく、リスクも存在します。
とくに注意したいのは 窒息の危険性 です。赤ちゃんが寝返りをして顔が枕に埋まってしまうと、呼吸が妨げられる可能性があります。
さらに、柔らかい枕やクッション類は乳児突然死症候群(SIDS)のリスクを高めるとされており、専門学会も使用を控えるよう警告しています。
SIDS(乳児突然死症候群)とは
SIDSとは、見た目には健康そうな赤ちゃんが眠っている間に突然亡くなってしまう病気です。日本では出生6,000〜7,000人に1人の割合で発生すると言われています。
SIDSを減らすための大切なポイントは次の3つです。
仰向けに寝かせる
母乳育児を心がける
保護者が禁煙する
特に「仰向けで寝かせること」は最も効果的で、厚生労働省や米国小児科学会も強く推奨しています。
枕を使わない安全な寝かせ方
赤ちゃんを安全に眠らせるためには、次の点を守ることが大切です。
固めのマットレスや布団を使用する
掛け布団は軽くして、顔を覆わないようにする
枕、クッション、ひも付きのよだれかけなどはベッドに置かない
つまり「何も敷かず、固めのマットに仰向けで寝かせる」というシンプルな環境が一番安全だと考えられています。
頭の形を整えるためにできる工夫
それでは枕を使わずに、頭のゆがみを予防・改善するにはどうすればよいのでしょうか?
① 体位変換
赤ちゃんの頭に同じ方向からばかり圧がかからないように、寝かせる向きや授乳・抱っこの姿勢をこまめに変える工夫が効果的です。
② タミータイム(うつぶせ遊び)
起きているときに保護者の見守りのもとでうつぶせにさせる時間を作ります。これによって首や背中の筋肉が鍛えられ、頭の後ろばかりに圧力がかかるのを防ぎます。
目安は1日合計60分程度。最初は数分から始めて、徐々に増やしていくのが良いでしょう。
※ただし、眠っているときにうつぶせにするのは危険なので避けてください。
医療的な治療が必要な場合
軽度のゆがみは成長とともに自然に改善することも多いですが、重度の場合は自然改善が難しいこともあります。その場合、医療機関で行う ヘルメット治療 が選択肢になります。
当院でも、3Dカメラで頭の形を計測し、必要に応じて専門メーカーと連携して治療を行っています。早期に相談いただくことで、より効果的な治療が可能となります。
まとめ
ドーナツ枕の効果は科学的に証明されていません。
むしろ窒息やSIDSのリスクがあるため、使用は推奨されません。
体位変換やタミータイムなど、日常の工夫で予防できることがあります。
頭のゆがみが気になる場合は、自己判断せずに医療機関にご相談ください。
赤ちゃんの健やかな発達のために、正しい知識と安全な環境づくりを大切にしましょう。