脳梗塞というと、高齢者に多い病気というイメージがあるかもしれません。

 

しかし、脳梗塞は子どもにも起こる病気です。

 

 

小児の脳梗塞は非常にまれですが、発見や治療が遅れると、手足の麻痺や言葉の障害など、将来の生活に影響する後遺症が残ることがあります。

 

一方、近年は診断技術や治療方法が進歩しており、子どもの脳梗塞に対しても、早期に適切な治療を行うことが重要と考えられています。

今回は、2026年に発表された米国心臓協会・米国脳卒中協会(AHA/ASA)の最新ガイドラインなどを参考に、子どもの脳梗塞の症状、原因、検査、治療方法について解説します。

 

1. 子どもの脳梗塞とは?

脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで血液が流れなくなり、脳の細胞が障害される病気です。

 

大人では高血圧、糖尿病、動脈硬化、不整脈などが主な原因になりますが、子どもでは原因が異なります。

 

子どもの場合は、生まれつきの血管の異常や心臓の病気、血管の炎症などが関係していることがあります。

 

小児の脳梗塞の年間発症率は、報告によって異なりますが、子ども10万人あたり年間約1.6〜2.4人とされています。

 

決して頻度の高い病気ではありませんが、健康に生活していた子どもに突然発症することもあります。

 

2. 子どもの脳梗塞ではどんな症状が出る?

子どもの脳梗塞で特に注意したいのは、突然現れる神経症状です。

 

次のような症状が突然現れた場合には、脳梗塞の可能性があります。

  • 片方の手や足が動かしにくい

  • 顔の片側が下がる、口元がゆがむ

  • 言葉が出ない、ろれつが回らない

  • 急に歩けなくなる、ふらつく

  • 物が二重に見える、視野が欠ける

  • 突然意識がおかしくなる

  • けいれんが起こる

 

特に、体の左右どちらか一方だけに異常が現れる場合は注意が必要です。

 

例えば、突然右手を使わなくなった、歩くと片足を引きずるようになった、といった症状が脳梗塞のサインであることがあります。

 

赤ちゃんや小さな子どもでは症状がわかりにくい

乳幼児では、自分の症状を言葉で説明することができません。

 

そのため、大人の脳梗塞とは異なる症状で発見されることがあります。

 

特に新生児では、けいれんが最初の症状になることがあります。

 

また、乳幼児では、片方の手足をあまり動かさない、急に歩けなくなる、反応がいつもと違うなどの変化に注意が必要です。

 

突然の麻痺、言葉の異常、歩行障害、意識障害などがある場合は、様子を見ずに119番で救急車を呼んでください。

 

症状が数分で改善した場合でも、一時的に脳の血流が悪くなる一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があり、緊急の評価が必要です。

 

3. 子どもの脳梗塞はなぜ起こる?

子どもの脳梗塞には、さまざまな原因があります。

 

① もやもや病

もやもや病は、脳に血液を送る重要な血管が徐々に狭くなる病気です。

 

不足した血流を補うために細い血管が発達し、画像検査で煙のようにもやもやと見えることから、この名前がついています。

 

子どもでは、泣いたとき、激しく運動したとき、息を強く吹きかけたときなどに、脳の血流が不足して症状が現れることがあります。

 

手足の麻痺や言葉の障害を繰り返す場合もあります。

 

② 脳の血管の炎症や異常

子どもの脳梗塞では、脳の血管に炎症が起こり、血管が狭くなることがあります。

 

これを局所性脳動脈症(FCA)などと呼びます。

 

感染症のあとに発症する場合もあり、それまで健康だった子どもに突然脳梗塞が起こることがあります。

 

③ 心臓の病気

先天性心疾患などがある子どもでは、心臓でできた血栓が脳の血管に流れて、脳梗塞を起こすことがあります。

 

④ その他の原因

首の血管が傷つく動脈解離、血液が固まりやすくなる病気、遺伝性疾患なども原因になります。

 

ただし、原因がすぐにわからないこともあります。

 

子どもの脳梗塞では、脳の状態だけでなく、血管や心臓などを詳しく調べることが重要です。

 

4. 子どもの脳梗塞はどのように診断する?

脳梗塞が疑われる場合には、頭部MRIなどの画像検査が重要になります。

 

MRIでは、脳梗塞が起こっている場所や範囲を調べることができます。

 

特に、DWI(拡散強調画像)という撮影方法は、急性期の脳梗塞を発見するために役立ちます。

 

また、MRAという検査では、脳や首の血管に狭い部分や詰まっている部分がないかを調べます。

 

必要に応じて、心臓の超音波検査や血液検査なども行い、原因を調べます。

 

ただし、脳梗塞を疑う緊急時には、MRIの実施を待つことで治療が遅れてはいけません。

 

医療機関の設備や患者さんの状態によっては、CTなどを優先して検査することもあります。

 

5. 子どもの脳梗塞にはどんな治療がある?

子どもの脳梗塞に対する治療は、近年大きく進歩しています。

 

2026年に発表されたAHA/ASAの急性期脳梗塞診療ガイドラインでは、一定の条件を満たす小児に対して、血栓を溶かす治療や血栓を取り除く治療を検討することが示されました。

 

① 血栓を溶かす治療

血管を詰まらせている血栓を、薬で溶かす治療です。

 

発症から4.5時間以内などの条件を満たす場合に、専門施設で検討されます。

 

ただし、小児では大人ほど治療効果に関する研究が十分ではなく、すべての子どもに行える治療ではありません。

 

② カテーテルで血栓を取り除く治療

太い脳血管が詰まっている場合には、カテーテルという細い管を血管内に入れて、血栓を取り除く治療を検討することがあります。

 

この治療は機械的血栓回収療法と呼ばれます。

 

特に6歳以上の小児では、条件を満たす場合に有効となる可能性が示されています。

 

発症から時間が経過していても、画像検査で救える脳の組織が残っている場合には、治療を検討できることがあります。

 

ただし、小児に対する治療経験のある専門施設で、慎重に適応を判断する必要があります。

 

③ 原因に応じた治療

急性期の治療だけでなく、再発を防ぐことも重要です。

 

血栓をできにくくする薬を使用する場合や、もやもや病に対して脳の血流を改善する手術を行う場合などがあります。

 

治療方法は原因によって大きく異なります。

 

6. 子どもの脳梗塞は治る?後遺症は残る?

子どもの脳梗塞では、治療後に症状が改善することもありますが、後遺症が残る場合もあります。

 

主な後遺症には、手足の麻痺、言葉の障害、てんかん、注意力や記憶力の問題などがあります。

 

小児の脳梗塞に関する研究では、長期的な神経学的障害が約50〜70%に認められるとの報告もあります。

 

ただし、後遺症の程度には大きな個人差があり、すべての子どもに重い障害が残るわけではありません。

 

また、子どもの脳は発達の途中にあります。

 

幼い頃には目立たなかった学習面や注意力の問題が、成長して学校生活が始まってから明らかになることもあります。

 

そのため、脳梗塞の治療後は、運動機能だけでなく、言葉、学習、行動、発達などについても長期的に確認することが大切です。

 

必要に応じて、リハビリテーションや学校生活での支援を行います。

 

7. 子どもの脳梗塞は再発する?

小児の脳梗塞は、原因によって再発する可能性があります。

 

特に、もやもや病や脳の血管が狭くなる病気がある場合には、再発への注意が必要です。

 

2025年に報告されたシステマティックレビューでは、小児脳梗塞の再発率は研究によって異なり、脳動脈症を伴う場合に再発リスクが高いことが示されています。

 

そのため、治療後も必要に応じてMRIやMRAなどの検査を行い、脳の血管の状態を確認します。

 

検査の間隔や治療期間は、原因疾患や症状によって異なります。

 

8. 子どもの頭痛も脳梗塞のサインになる?

子どもが頭痛を訴えた場合、脳梗塞を心配される保護者の方もいらっしゃると思います。

 

しかし、子どもの頭痛の多くは片頭痛や緊張型頭痛などであり、脳梗塞が原因であることは非常にまれです。

 

一方で、頭痛に加えて、突然手足が動かなくなる、言葉が出なくなる、意識がおかしくなるなどの症状がある場合には注意が必要です。

 

また、片頭痛でも視覚異常やしびれなどの前兆が現れることがありますが、初めての症状や普段と異なる症状の場合には、脳梗塞などとの鑑別が必要です。

 

頭痛の強さだけで脳梗塞かどうかを判断することはできません。

 

突然の激しい頭痛や、麻痺・意識障害などを伴う頭痛では、速やかに救急医療機関を受診してください。

 

9. 保護者の方に知っておいてほしいこと

子どもの脳梗塞は非常にまれな病気ですが、早期発見が重要です。

 

特に覚えておいていただきたいのは、突然、いつもと違う神経症状が現れた場合には、子どもでも脳卒中の可能性があるということです。

 

片方の手足が動かない、顔がゆがむ、言葉が出ない、急に歩けないといった症状がある場合には、様子を見ずに119番で救急車を呼んでください。

 

発症した時刻、あるいは最後に普段どおりだった時刻を確認しておくことも重要です。

 

また、子どもの脳梗塞は、大人とは原因や治療方法が異なるため、小児の脳卒中に対応できる専門医療機関での診断・治療が必要になります。

 

まとめ

子どもにも脳梗塞は起こります。

 

成人と比べると非常にまれですが、もやもや病や脳血管の異常、心臓の病気などが原因となり、突然発症することがあります。

 

近年は、血栓を溶かす治療やカテーテルで血栓を取り除く治療など、小児の脳梗塞に対する治療の選択肢も広がりつつあります。

 

しかし、何より重要なのは、症状に早く気づき、適切な医療機関で迅速に診断・治療を受けることです。

 

子どもの突然の麻痺、言葉の異常、歩行障害などを見逃さないことが、将来の生活を守る第一歩になります。


参考文献

  1. American Heart Association/American Stroke Association. 2026 Guideline for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke. Stroke. 2026.
    https://doi.org/10.1161/STR.0000000000000513

  2. Ferriero DM, et al. Management of Stroke in Neonates and Children: A Scientific Statement From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2019.
    https://doi.org/10.1161/STR.0000000000000183

  3. Sporns PB, et al. Save ChildS Pro Study. The Lancet Child & Adolescent Health. 2024.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39401507/

  4. Bastrup J, et al. Systematic Review of Recurrent Stroke in Children. Acta Paediatrica. 2025.
    https://doi.org/10.1111/apa.70075


姫路駅前みどり脳神経外科クリニック

当院では、頭痛、めまい、しびれなどの神経症状に対して診察を行っています。必要に応じてMRI検査による評価を行い、専門的な治療が必要な場合には適切な医療機関へご紹介します。

なお、突然の麻痺や言語障害など、急性脳卒中が疑われる場合には、クリニックへの通常受診を待たず、救急車を呼んでください。