片頭痛の患者さんに、
「薬は効きましたか?」
と質問すると、
「少し痛みは残ったけれど仕事はできました」
「頭痛は楽になったけれど、眠くて何もできませんでした」
といった答えが返ってくることがあります。
実はこの違いはとても重要です。
片頭痛の治療では、単純に「頭痛が消えたかどうか」だけでなく、薬を飲んだあと普段の生活に戻れたかを見ることが大切になっています。

片頭痛治療の目的は「痛みを減らすこと」だけではありません
片頭痛は、強い頭痛だけを起こす病気ではありません。
吐き気、光や音への過敏、めまい、集中力低下などを伴い、
「仕事ができない」
「家事が止まってしまう」
「学校を早退する」
「休日の予定をキャンセルする」
といった生活への影響を生じます。
そのため片頭痛治療の本当の目的は、
頭痛の数字を小さくすることではなく、できるだけ早く普通の生活に戻ること
と考える方が分かりやすいでしょう。
日本人を対象にしたレイボーの実臨床データ
2026年、日本全国53施設で行われた片頭痛治療薬ラスミジタン(商品名:レイボー)の市販後調査が報告されました。
この研究には、実際の診療で新たにレイボーを処方された患者さんが参加しています。
中等度から重度の片頭痛発作に対して服用したところ、初回投与2時間後に約21%で頭痛が消失し、約54%で頭痛が軽くなりました。
さらに興味深いのは生活への影響です。
服用前に仕事や学校生活が「かなり妨げられている」「動けない」状態だった患者さんのうち、約46%が2時間後には「問題ない」または「少し支障がある程度」まで改善しました。
つまり急性期治療では、
「痛みが何点になったか」だけでなく、「動けるようになったか」
を見ることが重要なのです。
一方で、副作用も生活に影響します
今回の日本人の調査では、レイボーを服用した患者さんで比較的多かった症状として、
めまい、眠気
が報告されました。
めまいの持続時間の中央値は約3時間、眠気は約4時間でした。
もちろん、すべての患者さんに起こるわけではありません。
しかし、
「頭痛は良くなったけれど、眠くて仕事ができなかった」
のであれば、その患者さんにとっては必ずしも理想的な急性期治療とはいえません。
反対に、
「少し眠気はあったけれど、これまで寝込んでいた発作から2時間で動けるようになった」
のであれば、十分価値のある治療かもしれません。
片頭痛薬は、効果と副作用のバランスを一人ひとりで考えることが大切です。
トリプタン以外にも治療薬はあります
片頭痛の急性期治療には、NSAIDs、アセトアミノフェン、トリプタンなどが長く使われてきました。
現在はそれに加えて、ラスミジタンやCGRP受容体を標的とするゲパントなど、異なる作用機序を持つ薬も選択できるようになっています。
そのため、
「トリプタンが効かなかったから片頭痛薬は全部効かない」
というわけではありません。
発作の特徴や体質、持病、仕事内容などを考えながら薬を使い分けることができます。
例えば、
発作時の吐き気が強い
仕事中に発作が起こる
眠気が出ると困る
心血管疾患のリスクがある
頭痛薬を飲む日が増えている
といった情報によって、適した薬は変わります。
「薬が効かない」ときは、飲み方も確認します
片頭痛薬が十分に効かない場合、薬そのものだけが原因とは限りません。
服用するタイミングが遅すぎる場合や、1回目の薬で十分な効果が得られず何度も追加服用している場合もあります。
また、頭痛薬を使う日が増えすぎると、薬剤使用過多による頭痛(MOH)につながることがあります。
月に何日頭痛があるのか、何日に薬を使っているのかを記録することは非常に大切です。
「頭痛が治ったか」ではなく「生活に戻れたか」
片頭痛の薬を評価するときには、
「痛みは何時間で楽になったか」
だけでなく、
仕事に戻れたか
家事ができたか
学校に戻れたか
予定をキャンセルせずに済んだか
眠気やめまいで困らなかったか
もぜひ教えてください。
治療の目的は、薬を飲むことそのものではありません。
片頭痛によって失われている時間を減らし、普段の生活を取り戻すことが治療のゴールです。
姫路駅前みどり脳神経外科クリニックでは、片頭痛の特徴や頭痛薬の使用状況、生活への影響などを確認しながら、それぞれの患者さんに合った急性期治療・予防治療を検討しています。
突然の激しい頭痛、これまでとは異なる頭痛、麻痺や言葉の出にくさなどを伴う場合には、必要に応じて頭部MRIなどを用いて二次性頭痛の評価も行います。
「薬を飲んでいるのに生活への影響が大きい」
という場合も、片頭痛治療を見直すサインです。
頭痛を我慢できる状態ではなく、片頭痛を気にせず生活できる状態を目指して治療していきましょう。


