姫路駅前みどり脳神経外科クリニックには、「片頭痛でMRIを撮った時に“白い影”があると言われて不安」というご相談がよく寄せられます。
この“白い影”は、医学的には 大脳白質病変(white matter hyperintensities:WMH) と呼ばれるものです。
今回は、最新の研究や国際的データをもとに、片頭痛と白質病変の関係を解説します。
■ 「大脳白質病変」とは?
MRIのT2強調画像やFLAIRで、脳の白い部分に小さな白い点・線状の影として映るものです。
大きさは数mm
多くは無症状
年齢とともに誰でも増えやすい
白質病変=すぐに病気、というわけではありませんが、血流が悪くなったサインでもあります。
■ 片頭痛のある人は白質病変が見つかることがある
これまでの大規模研究では、
片頭痛のある方では、白質病変がやや多く見られる
ことがわかっています。特に女性や“前兆のある片頭痛”では、影が見つかりやすい傾向があります。
しかし「影がある=重大な病気」という意味ではありません。
片頭痛の特徴である、くり返す血管の変化が長い年月のうちに小さな影として残ったと考えられています。
■ 白質病変の特徴と場所
片頭痛で見られやすい白質病変は、
深部白質(前頭葉など)
数mmの点状
症状が出ないことがほとんど
大きく広がったり増え続けることはまれ
頭痛外来ではよく見られるタイプの所見です。
■ ただし「全部が片頭痛のせい」と決めつけるのは危険
ここは専門的に大切なポイントです。
MRIで白質病変が見つかったとき、すべてを片頭痛の影響と考えてしまうと、別の病気を見逃す危険があります。
■ 鑑別に必要なチェックポイント
白質病変を見たときは、次の情報を組み合わせて総合的に判断します。
① 年齢・血管危険因子
高血圧
糖尿病
高コレステロール
喫煙
これらがあると、脳の小さな血管が障害されて白質病変が増えることがあります。
② 家族歴(遺伝性疾患)
特に CADASIL(遺伝性小血管病)は若い頃から白質病変が出るため、
「親族に脳卒中や片頭痛が多い」場合には注意します。
③ 神経所見・症状
片側のしびれ
視野障害
歩行障害
複視
といった症状がある場合、片頭痛以外の病気も考える必要があります。
④ 病変の分布
白質病変の場所には特徴があり、
側頭極
外側膝状体
前頭葉皮質下
など特定の部位に病変が目立つ場合、別の病気を疑うきっかけになります。
■ 想定される主な鑑別診断
脳小血管病(高血圧・動脈硬化)
脱髄疾患(多発性硬化症:MS、NMOSD)
遺伝性小血管病(CADASILなど)
こうした病気を見逃さないために、片頭痛患者であっても一度は専門医が丁寧に画像を確認することが大切です。
■ 白質病変は「危険」なの?
現在の研究では、片頭痛でみられる白質病変が
認知症
明らかな記憶力低下
手足の麻痺
につながるという強い証拠はありません。
ほとんどは**日常生活に影響のない“無症状の影”**です。
ただし、白質病変は「脳の血管が弱りやすいサイン」の一部でもあるため、血圧・血糖・脂質管理は大切です。
■ MRIフォローは「必要なときに」
患者さんから多い質問に、
「白質病変があるから毎年MRIを撮らないといけないのですか?」
というものがあります。
年1回が必須というわけではありません。
ただし、下記の場合はMRIフォローが推奨されます。
白質病変が片頭痛だけで説明しにくい
多発性硬化症や遺伝性疾患の可能性がある
症状(しびれ・視野障害など)が新しく出た
病変の進行を確認する必要がある所見
典型的で問題のない影の場合、毎年撮る必要はありません。
ただし重大な疾患を見逃さないため、非典型的な場合は、フォローアップをおすすめします。
■ 片頭痛の方ができる最善の対策
白質病変が見つかったときのポイントは次の3つです。
① 頭痛発作を減らす
予防薬(内服薬・CGRP抗体薬)や生活習慣改善が有効です。
② 血管リスクを整える
血圧・血糖・脂質管理、禁煙は非常に大切です。
③ 必要なときにMRIフォロー
症状が変わったときに早めに相談しましょう。
■ まとめ
片頭痛のある方では白質病変が見つかることは珍しくありません。
しかし、
多くは無症状
認知症などへつながる強い証拠はない
すべてが片頭痛のせいとは限らない
必要に応じてMRIフォロー
という点が重要です。
姫路駅前みどり脳神経外科クリニックでは、脳神経外科専門医がMRI画像を丁寧に評価し、不安を取り除けるようサポートしています。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。


