脊髄小脳変性症とは?
脊髄小脳変性症(SCD)は、歩行時のふらつき、手の震え、話しづらさなどが起こる神経の病気です。
小脳という後頭部の脳の一部が主に影響を受け、運動をスムーズに行うのが難しくなる「運動失調」という症状が特徴です。
この病気は、腫瘍や脳梗塞、炎症などが原因ではない「変性」疾患として分類されます。
脊髄にも症状が広がる場合があるため、脊髄小脳変性症と呼ばれます。
患者数と種類
脊髄小脳変性症の患者さんは全国で約3万人おり、そのうち約2/3が遺伝歴のない「孤発性」で、約1/3が遺伝性です。
日本では特にSCA3(マチャド・ジョセフ病)、SCA6、SCA31、DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)が多く見られます。
小児では、EAOH/AOA1といった遺伝性疾患もあります。
遺伝と原因
この病気は遺伝性のものと遺伝性でないものに分けられます。
遺伝性の病気では、親から子に受け継がれる「常染色体優性遺伝」や、兄弟姉妹だけに症状が出る「常染色体劣性遺伝」があります。
近年では多くの遺伝子異常が解明されており、治療法の研究が進められています。
主な症状
- 運動失調:歩くときのふらつき、手の不器用さ、話しにくさが典型的。
- 痙性対麻痺:足が突っ張り、歩きにくくなる。
- 症状は非常にゆっくり進行し、急激に悪化することはありません。
検査
- MRI検査では、脳幹や小脳の萎縮といった所見を認めます。
治療と対策
現在、病気そのものを治す治療法はありませんが、症状を緩和する方法(対症療法)はあります。例えば:
- 薬物療法:運動失調にはタルチレリンなどの薬が使用されます。
- リハビリテーション:
日常生活の注意
- 転倒を防ぐため、手すりの設置や移動時の安全確保が重要です。
- 嚥下障害(飲み込みの問題)により誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、食事形態の工夫や口腔ケアが必要です。
病気の経過
症状の進み方は個人差がありますが、比較的ゆっくりと進行します。進行すると、自律神経機能の障害やしびれが起こることもありますが、コミュニケーション能力や認知機能は比較的保たれます。
脊髄小脳変性症は一つの病気ではなく、さまざまな原因やタイプを持つ病気の総称です。研究が進み、将来的に有効な治療法が見つかることが期待されています。