無症候性脳梗塞は、症状が現れないまま脳の一部に血流が行き届かなくなり、脳細胞が死滅する状態です。MRIなどの画像診断で偶然発見されることが多く、一般的には自覚症状がないため、気づかれにくいのが特徴です。一方で、片頭痛は頭痛を伴う神経学的な疾患であり、特に「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる視覚的な前兆を伴うことがあります。

 

近年の研究では、片頭痛と無症候性脳梗塞との関連性が注目されています。特に、閃輝暗点を伴う片頭痛を持つ人々が、無症候性脳梗塞を発症しやすいことが示されています。最新の研究(González-Ortiz et al., 2020)によると、片頭痛患者、特に前兆を伴う片頭痛の患者は、脳の小さな血管がダメージを受けやすく、無症候性脳梗塞のリスクが高いことが確認されています。

 

片頭痛と無症候性脳梗塞の関連性については、いくつかのメカニズムが考えられています。片頭痛患者では、発作時に血管が一時的に収縮した後、急激に拡張する現象が見られます。このような血管の不安定な反応が、脳の微小な血管に負担をかけ、微小な梗塞を引き起こす可能性があります。また、片頭痛患者は、血液の凝固機能が高まりやすいという特徴もあり、これが脳内での血栓形成を促進し、無症候性脳梗塞のリスクを高めると考えられています(Zwart et al., 2018)。

 

無症候性脳梗塞は、将来的に脳の機能低下や認知症のリスクを高める可能性があるため、片頭痛患者にとっては注意が必要です。特に、前兆を伴う片頭痛を持つ人々は、定期的な脳の画像診断を受けることが推奨されます。これにより、無症候性脳梗塞の早期発見と適切な治療が可能になります。

 

片頭痛治療においては、頭痛そのものの管理だけでなく、無症候性脳梗塞のリスクも考慮したアプローチが重要です。生活習慣の改善や、必要に応じて血管の健康を保つための薬物療法を取り入れることで、脳血管障害のリスクを減らし、定期的な画像フォローをおこなっていくことが大切です。